誰かを亡くしたり、友達に裏切られたり、上司の期待に答えられなかったりするなど辛い経験をしたときに、感情が無ければ辛い気持ちにならなかったかも、自分に期待せずに済んだのかもと思ったことはないですか
そんな思いを持ったことのある人は是非読んでみて、「感情」を感じれない体験をしつつ物語を楽しんでください。長らく小説読んでいない人もスラスラ読めるので、手に取ってみてほしいです。
今回紹介する本アーモンドは感情を感じることができない主人公の成長物語です。
作品紹介
韓国で40万部突破し世界で13か国で翻訳されています。
2020年本屋大賞翻訳小説部門第1位にも選ばれています。
BTSのリーダーRMも読んでいます。
あらすじ
「おばあちゃんは僕をかわいい怪物と呼んだ」
生まれつき偏桃体(アーモンド)が小さいため「喜」「怒」「哀」「楽」「悪」「愛」等の感情を感じることができない主人公ソン・ユンジェ
母親は感情が分からない息子がせめて目立たず社会生活が送ることができるように感情を教えた。母親がユンジェの誕生日に通り魔に襲われ、植物状態となり一人になった。そんなときもユンジェはいつものように、無表情でただ見つめるだけであった。
その後、主人公が激しい感情を持ち表現するもう一人の″怪物”ゴニとの出会い、登場する人物との関わりで「愛」に触れ成長していく物語である
偏桃体とは?
この本を読んで偏桃体って何?って興味を持つ人もいるのではないでしょうか。
偏桃体とは大脳辺縁系の一部でアーモンドぐらいの大きさをしています。
こんなに小さい部位が人間にとって大きな役割をしています。
外部の感覚刺激(視覚、聴覚等)に対して快・不快、危険、有益等の判断を行っています。そのため、偏桃体が上手く働かないと恐怖や怒りなど感情を感じれないため逃避行動や攻撃を行うことができません。
母親が感情を教えたのは、ユンジェが他人から攻撃されたときや危機に陥ったときに身を守る対応ができないため、目立たないようにすることで危機そのものを回避しようとしたと考えることもできますね。
感想
数年ぶりに紙の本を読みましたが、テンポよく話が進んでいくため読む手が止まりませんでした。
感情を激しく表し相手に恐怖や怒りを伝えるゴニと無表情で事実を淡々と伝えるユンジェの掛け合いは嚙み合っているようで、噛み合わずゴニのじれったい複雑な心情が感じれます。序盤は険悪な二人ですが、感情の先生ともいえるゴニが登場したことでユンジェの世界に会話が増え、小説の世界が色づいたように感じました。
一方で、他人に「共感」できないことは周囲から排除の対象となり、好気や憎悪の対象となってしまうこともあり厳しい状況に陥ってしまうことも分かりました。しかし、感情が乏しい本人にとってはそれも感じれないため状況的には厳しくても心情的には変化はないのでしょう。
本の最後に翻訳者の矢島先生のコメントにも書かれているように、この本は共感の喪失という社会問題にも訴えているため違った視点でもう一度読み返すことができると思います。
最期に・・・
小説として読みやすく、主人公自身も個性がありますが登場人物も癖がある人々ですので面白く読めると思います!
きっと、読者を感情の無い世界に連れて行ってくれると思います!
是非読んでみてください!
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